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3/4、AXISギャラリーで、 Calm Technology®推進者のアンバー・ケース氏による  ワークショップイベントを開催しました
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3/4、AXISギャラリーで、 Calm Technology®推進者のアンバー・ケース氏による ワークショップイベントを開催しました

Mar 30, 2026

2026年3月4日、東京六本木のAXISギャラリーにて、「プロダクト/UXのためのCalm Tech実践」が開催されました。生活に溶け込む情報技術である「 Calm Technology®(以下、カームテクノロジー)」の考え方を推進するアンバー・ケース氏をお招きし、ジャーナリスト林信行氏がファシリテーターを務めました。国内において「カームテクノロジー」を実践してきたmui Labも貴重な登壇の機会をいただきました。 
当日は50名を超えるデザイナーや企業関係者にお越しいただき、機運を醸成する一歩となりました。 

◾️カームテクノロジーとは? 

1995年にゼロックス・パロアルト研究所のマーク・ワイザーが提唱した概念を、アンバー・ケースが体系化・発展させたデザイン思想。その核心はシンプルで、「テクノロジーは人間の注意を奪うのではなく、穏やかにするべく、そっと生活に溶け込むべき」というもの。 

日本のものづくりに根付く「穏やかな」デザイン

情報技術やデジタル機器の発展により、人の注意が資源として消費される「アテンション・エコノミー」の現代。「カームテクノロジー」はそのカウンターパートとして世界の名だたる企業から大きく注目されはじめています。 

 イベントでは、林信行氏からまず導入として、カームテクノロジーと日本の美意識の共通点について言及がありました。実は、このカームテクノロジーには、「わび・さび」「間(ま)」「おもてなし」「たたずまい」など、日本の伝統的な文化や美意識と共鳴する部分が多くあります。ケース氏自身も、ソニーや任天堂など日本のプロダクトに囲まれて育ち、その深く考え抜かれたデザインから大きな影響を受けたと語っています。 

一方で、日本で当たり前のように実践されてきた細やかな気遣いは、これまで十分に言語化されてきませんでした。今回それが「カームテクノロジー」という世界共通の言葉を得ることで、初めてグローバルに伝わる可能性を持ち始めています。日本の企業が率先すべき新たなデザインの基準として、カームテクノロジーの普及に向けた思いが語られました。 

 イベントの位置付けについては「AXIS Web」の記事をご覧ください:

 https://www.axismag.jp/posts/2026/02/701503.html 

カームテクノロジーを実践につなげる講義と対話

ケース氏からの講演では、まずカームテクノロジーの基本的な考え方や、理論についての共有がありました。 

近年カームテクノロジーへの注目が高まる中で、ケース氏は、本来の意図が希薄化されるのを防ぐため、2024年末にCalm Tech Instituteを設立。「Calm Tech Certified™」認証制度をスタートさせました。注意、周辺視野、耐久性、光、音、そして素材という6つのカテゴリーに基づき、ユーザーの負荷を減らすための多様な観点から81項目の評価基準が設けられています。 

ケース氏によると、カームテクノロジーとはすなわち、人間が何かするための通過口(Pass-through)として機能するということです。テクノロジー自体が目的ではなく、あくまで人が何かをしたり考えたりするための手段として「生活に溶け込んだ」ものであるべきという考え方です。わかりやすい例として挙げられたのは、バナナの皮。熟すと色が変わり、皮をむかなくても中身の状態が容易にわかります。 

 こうした人間中心設計に基づくデザインは、企業にとってブランドロイヤルティを生むことにもつながります。例えば、ある米国企業が販売する煙探知機は、誤作動が多く、警報音を容易に消せないことが不満につながっていました。そこで、誤報時に人が長い棒やほうきで押せるボタンを追加し人間中心デザインで再設計したところ、市場シェアが大きく拡大した話などが紹介されました。 

カームテクノロジーの8原則

後半パートでは、参加者同士によるワークショップを実施。講演の内容を自らのプロダクトや業務に落とし込み、実践につなげてもらおうという試みです。 

当日会場に展示された、実際にカームテック認証を有するプロダクトの評価ポイントを見出すワークのほか、「カームなホテルの部屋を設計するためには?」といったテーマでの意見交換を実施。「エントランスから部屋までのアプローチをあえて長くすることで、宿泊者の心理状態を落ち着かせることにつながるのではないか」といった意見など、多様なバックグラウンドをもつ参加者による有意義な対話が生まれました。 

空間のカームテクノロジー化を見据え、日本から世界を牽引

ワークショップでの熱量のまま、最後は国内の業界に向けた機運醸成のメッセージとすべく、実践者であるmui Labからトークセッションを行いました。

mui Labは、日々の生活に根ざす行為 −例えば、開店をそれとなく知らせるお店の暖簾や、柱に子どもの身長を刻む習慣− からヒントを得て、人に寄り添うテクノロジーのあり方を追求してきました。そのアプローチとカームテクノロジーとの親和性がきっかけとなり、ケース氏とのつながりが生まれた経緯があります。 そうした設計思想に基づく 「muiボード第2世代」は、国内で初めて「Calm Tech Certified™」の認証を取得。2024年には Calm Tech Institute の日本支部「一般社団法人カームテクノロジー協会」がmui Lab京都本社にて発足しました。 

空気や照明など空間の状態が人々のウェルビーイングに影響を与えることが分かってきた昨今。今やプロダクト単体の枠を超え、空間にまでその対象が広がりつつある中で、mui Labとしても、空間全体を包括する「くらし」そのものへのアプローチを積極的に進めています。 

今回の発起人である林信行氏からは以下のコメントをいただきました。

21世紀初頭のシリコンバレー企業は、強欲かつ無自覚に人々のスクリーンタイム(画面を見ている時間)やアテンションを奪い、ディストピアへと導きつつあった。その反省から、最近では子どものソーシャルメディア利用規制の動きなどが加速している。だが、社会に押しつけられるまでもなく、喧騒に疲れ、テクノロジーとの新しい関係を模索する人々も増えてきた。ここ数年で広がったデジタルデトックス、ポッドキャストなど音声メディアの隆盛、レコードなどのアナログメディアの再流行なども、そうした時代の気分が形になって現れた現象だと言えるだろう。Calm Techは、そうした人々が求めるテクノロジーの形を、認知科学などの視点で体系化しガイドライン化した製品設計の技術であり、今後のデジタルものづくりの重要な指針になると思う。

ジャーナリスト 林信行

カームテクノロジーの普及にはまだまだギャップがありますが、今回のイベントは、国内での認知向上への大きな一歩になったと言えます。これから必要になるのは、日本企業の文化的な着眼点やものづくりへの真摯なアプローチにほかなりません。世界に影響を与えうる日本企業とカームテクノロジーの今後の広がりに、ぜひご期待ください。

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