インタビュー記事「暮らしをつくる上で心がけているのは、心が動くこと、そして質感」_八清 代表取締役社長 西村直己氏

2 Sep 2021 | Media

インタビュー with 株式会社八清 代表取締役社長 西村直己氏

 

創業65年の株式会社八清(ハチセ)の代表取締役社長 西村直己氏に、今回、mui Labと行った「スマート町家」の取り組みを機会に、町家保存についての思い、将来へのビジョンやスマートホームなどのテクノロジーとの掛け合わせについての思いをお聞きしました。

 

interview date:2021/7/20
interview & text:mui Lab 森口 (M)
interviwee: 株式会社八清 代表取締役社長 西村直己氏(N)

 

M) 八清様は、1956 年に繊維業として創業してから不動産業に転向されましたが、先代はどのような 思いでスタートされ、次世代へ伝承されてきたのでしょうか?

N) 1956 年に繊維業を立ち上げてからすぐの 1960 年代に不動産業にシフトし建売業からスタートしま した。そして 1999 年に購入した中古住宅を弊社でリフォームした物件をリ・ストック住宅というブ ランドにして販売しました。今で言うと、リフォームではなくリノベーションというレベルの躯体 構造から見直す改装です。その数年後に町家バージョンを作ることを始めました。京町家は当時5 万件ほどありましたが、大半が新建材による改装を加えられ味気がなくなってしまってました。 その中でも京町家本来の意匠が残っている物件を購入してオープンハウスをした時にすごい反響が あったんです。客層も大学の先生などいつもと違ったお客さんが来てくれました。何か違う手応え を感じて面白いなと思い、伝統的な自然素材の建材を使って町家にあった仕様で改装したリストッ ク京町家を販売していきました。当時は中古は 3K(暗い、汚い、怖い(安全面で)と言われるくら いでなかなか売れないし、扱いたがらない商品だった中、リ・ストック京町家は新築と同等以上の 値段で売れていきました。僕たちのやったことで「中古が新築を超えた!」というように全く異な る価値観が広がっていきどんどん京町家に傾倒していきました。派生商品としてシェアハウスや宿 のバリエーションも広げていったり、在来建築にアンティークな質感を重視した改装をしていきま した。

 

M) 企画力の軸として”ものづくり”を挙げられていますが、実際にはどのようなところにこだわりを持たれていますか?

N) 経営理念として「安心・安全・快適」があります。安心・安全というのはどこの会社も使う理念ですが、「安心」は心理的なもので、子供の安全を確保するとか防犯とかです。「安全」は地震や天 災に強いこと、「快適」は通常で言うと断熱ですが、我々は心が動くこと全てと定義しています。 居心地、情緒など心が入るものです。むしろその方が面白いなと思ってます。「なんかわからんけ ど居心地いいな〜。」といった感じで、大切なのは何がそれを作り出しているかを追求していきたいです。あとは自由です。あまり指示はせずスタッフに任せます。ガチガチにブランディングする というよりは、それぞれのスタッフが八清の断片を作り出してます。当社にはテーマカラーとかコ ーポレートカラーとかはないです。
あとは、質感ですね。経年を楽しんで欲しいです。ビニールクロスのように残念な感じにならず、手垢がむしろいい、といった感じで。

 

M) 地域に根付いている八清さんとして現在、京都の暮らしはどのように変化していると考えていますか?環境、家づくり、暮らしの営み、自然との調和、地域でのつながり、伝統習慣の継承、人々 の思考などを起点に教えてください。

N) もともと日本に根付いていた文化や習慣が失われている感じはしますね。自然を愛でるとか、日本 人が元々持ってた感覚が減ってきている感じはしますよね。変な合理性や短期的な利益を追求する 人が増えてて画一になっているし。家づくり自体はとことん追求したい人と、安く住みたいという 人とに二極化していると感じがします。

 

M)お客さまが八清の町家に住むことで考えが変わることなどはありますか?

N) 今は当社の想いを Web を通じて発信しているので、価値観として八清寄りのひとが住んでくれてま すね。建物を構造から見直し改修して建物だけでなく地域性も取り入れた世界観を伝えているの で、エコなど含めて意識が高い人が購入してくれています。ただ、投資で買う方も増えてはいます が、少なくとも価値観は理解した上で活用してくれようとしているとは思います。

 

M) 不動産事業以外に、保存・継承のために取り組まれている活動はありますか?

元々、先代の社長が町家に力を入れていくことを決めてからは、啓蒙のために京町家検定を作った り、「町家の日」ということでお客さんと交流するイベントなどはやってます。あとはマンション を買い取って「コレクティブハウス」というシェアマンションの運営にも力を入れています。そこ で集客イベントをしたりコワーキングと連動させる活動はしています。暮らしの提案という軸で賃 貸や賃貸収益物件の企画にも力を入れてますね。

 

M) mui のコンセプトである「家族とつながる情緒的なコミュニケーション」ができるスマートホー ムについてどう思いますか?

N) 木質デバイスに触って反応するというのはとても面白いと思います。手書きでメッセージを書くとかは子供にとっても興味深いものだと思います。僕の子供が3歳と7歳なので書いてくれたら「おお!」となりますね。

 

M) どんな未来の暮らしをイメージされ、地域の不動産屋さんとしてどのような暮らしを作っていき たいと思いますか? 将来の町家や京都の風景を含む佇まいに対するイメージはありますか?

N) 「不動産で人を幸せに。」というところが行き着くところですが、楽しく快適に暮らせることを大 切にしています。資産という側面から経済的に価値が下がらない家を作ることも含めて。八清コミュニティや、つながりといったものを醸成して小さな経済圏となる仕掛け作りはずっとしたいなと 思ってます。お金は産まなくても最終的には生きてて楽しいと思う事はそういうことかなと思います。宿泊とは異なり、自然がある、いろんな人と交流したり、ここの拠点で暮らしててよかったと思えるようなコミュニティビジネスをしたいですね。あとは家でものづくりする人も多いので、ク リエイティビティを高める仕組みがあると良いですね。小説家や陶芸家などクリエイティブする方 には町家の空間であるとはかどるといったようなイメージが広がると良いなと思います。アーティ ストレジデンスなど場所を拠点に暮らしを紡いでいくといったことも考えています。

 

M) 既にお考えのように、家単体ではなく地域のつながりが広がりライフスタイルが多様なものとな っている中で、地域やコミュニティの単位で取り組みたいことはありますか?そこでデジタルテク ノロジーが介在するならば、どの様なことをされたいですか? 何か具体的なイメージはありますか?

N) 別荘など持て余している家を他の人に使ってもらうようなセカンドハウスのシェアリングを研究しています。二拠点居住者をターゲットとしてオーナーとタイムシェアリングができるシステムを考 えています。その辺りをソフトの力でできると良いなと思ってます。その人たちには清掃もしてゴミ捨てもしてもらい、暮らしの実感を持ってもらいたい。AI などを通じてどんな気分かわかるセンシング機能などもあれば良いなと思います。

 

M) 継続的に mui とコラボレーションすることで今後やりたいことはありますか?

N) スウィッチは全部 mui で、みたいな感じになるといいですね。プラスティックなどはできるだけ排除して全部自然素材でやっていきたいです。

 

先代からどのような思いで町家再生をし続けてこられているか、またテクノロジーに対しての思いや未来のビジョンを拝聴でき、大変良いインサイトとなりました。ありがとうございました。